1945年8月6日、アメリカ合衆国が広島に原爆を投下しました。8月9日には、もうひとつの原子爆弾が長崎市に投下されました。少なくとも129,000人が死亡し、その後、さらに数千人が死亡したとされています。
これらの歴史的なできごとは、戦争がもたらす破壊とその残酷さを想起するための手掛かりとなります。世界平和への理解のもとに核軍縮を進めていくために、
ヒロシマ・アーカイブは、原子爆弾投下を体験した被爆者の証言を保存・ウェブ公開し、未来に向けて継承することを目指しています。この可視化作品「Mapping the Voices of the Hiroshima Archive」は、ヒロシマ・アーカイブの被爆者証言データを活用しています。まず、証言データを分析し、含まれる単語を「身体」「空間」「時間」「場所」などのカテゴリ・テーマに分類し、色別に可視化することによって、各々の証言の「特徴」を浮かび上がらせます。このことによって、広島原爆の実相についての理解を助け、核と人類の在り方についての対話のきっかけをつくります。
本作品では、ヒロシマ・アーカイブの被爆者証言のテキストデータを解析し、可視化しています。インターフェイスにおける縦一列が一件の証言に対応しており、列における一つの正方形が一つの単語を表しています。正方形は、カテゴリ・テーマによって色分けされており、マウスオーバーによって単語がポップアップされます。さらにクリックすることで、全証言に含まれる同一の単語がすべてハイライト表示されます。「表示切替」ボタンを押すと、各証言内の単語がカテゴリ・テーマでソートされます。さらに上部の各ラベルをクリックすることで、そのカテゴリ・テーマに含まれる単語のみがハイライト表示されます。インターフェイスは縦長にデザインされているので、スクロールしてご覧ください。
以降、4つのテーマ「身体」「空間と場所」「時間」「物質世界」について説明します。
被爆者証言は、人間の「身体」が受けた被害についての言及を含みます。被爆者は、証言全体にわたり「目」「顔」「声」「手」などの身体部位について、しばしば触れています。このことは、原子爆弾の爆発による熱・爆風やその後の放射線被ばくなどが、身体に深く影響を与えたことを表しています。また、身体部位を表す単語が多数含まれていることによって、兵器に対する人間の身体の脆さ・弱さが想起されます。
広島という現実の都市で暮らしていた被爆者の証言には、当然ながら「空間と場所」に対する言及が多数含まれています。こうした単語の中でも「中」「外」や「上」「下」などの位置関係を示す単語が、もっとも頻出しています。日常の生活空間との関連を示す単語が使われていることから、原子爆弾投下が、普段と変わらぬ生活の中で起きたできごとだったことがわかります。
「時間」に対する言及は、爆発した瞬間を含む原爆投下にまつわるさまざまなできごとが、被爆者の記憶のなかにおいて特定の日・時間に明確に紐付けられていることを表します。このカテゴリにおいては「時」「日」「月」といった単語が頻出しています。
証言全体にわたって「物質世界」の構成要素に対する言及が非常に多くみられます。例えば「原爆」「水」「地」「火」「音」などが頻出しています。このことは、原爆の爆発、あるいはその後の効果が、被爆者の周囲の空間に対して、凄まじい影響を与えたことを示しています。